季節が変わり、PM2.5の濃度が高くなってきた。
この記事を書いている前日(5月8日)では関東地方周辺で環境基準値(35μg/立方メートル以下)を超え、千葉県野田市で54μg/立方メートル、東京都北区で46μg/立方メートル、東京都千代田区で45μg/立方メートルとなっていた。
環境基準値を超えているので、外出時はマスクを着用し、帰宅後は目の洗浄やうがいが奨励されている。
これが1日平均値で70μg/立方メートルを超えると、外出を控えるように注意が呼びかけられる。
さて、このPM2.5は、直径2.5μm以下の粒子で、その多くは硫酸塩だ。石炭やガソリンを燃やしたときに発生する二酸化硫黄が空気中で酸化されると硫酸塩になる。
他にも亜鉛や銅、スズなどの重金属などが含まれており、健康に害が有ることで有名になった。
ただ、一般的に私たちが知っているのは、PM2.5は気管支炎などの呼吸器系の疾患を引き起こす可能性があるということ程度だろう。
もう少し詳しい人なら、PM2.5が微細で血管に入り込むことから、動脈硬化や心臓疾患にも影響が有る、ということまで知っているかもしれない。
ところがそれだけでは無さそうだと言うことが、アメリカ心臓協会(American Heart Association)から発表された。
なんと、脳にダメージを与えるというのだ。
脳を萎縮させるPM2.5
アメリカ心臓協会の発表に依れば、ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター(Beth Israel Deaconess Medical Center)が、1995〜2005年の間、米国ニューイングランド地方の60歳以上の男女943人を対象に、大気汚染が脳に与える影響の調査を行ったという。
対象者は全員、認知症や脳梗塞などは持っていない健康な人達だ。
この地域は米国内でも大気汚染が比較的低い地域だという。そのような地域でも大気汚染の影響が出ているかどうかが注目された。
調査はMRIによる画像によって脳の状態を調べる方法で行われた。
調査期間中に、対象地域のPM2.5濃度が1立方メートル辺り2μg増加した。すると脳全体の体積が0.32%縮小したことが分かったのだ。
そのため、脳梗塞の危険性が46%高まると判定された。
この脳の縮小率は、加齢による1年分の変化に匹敵する。つまり、大気汚染が脳の萎縮を加速させていると見られたのだ。
また、この研究では、PM2.5の濃度が上がるにつれて、無症候性脳血管障害の発症率も高まることが分かったという。
PM2.5対策が加速することを期待したい
上記の調査結果は、中国のメディアでも取り上げられたようだ。同国ではより深刻な事態に置かれているから、かなり反響があったのではないかと想像できる。
いや、その東に隣接する日本でも、PM2.5からは逃れられない。
呼吸系疾患だけでなく、脳にまで悪影響が有るとなれば、PM2.5の恐ろしさは倍増する。
どうだろう。この調査発表は、またしてもマスクの売上に貢献したかもしれないが、それ以上にPM2.5を減らすという根本的な対処方法の検討を加速させることに貢献することを期待したい。
【参考】