FUTURUSでも多く取り上げてきた様に、ドローンが進化し、多様化してきている。
空撮や物流、緊急時の物資輸送など、利用され期待されている分野は多い。
しかし、ひとたび災害が起きた現場でドローンを利用しようとした場合、大きな弱点がある。
壁に囲まれた狭い通路や、複雑な形状をした瓦礫の中を進もうとすれば、ローターや本体がぶつかった途端に、弱々しく墜落してしまうのだ。
また、救助すべき人に近付いて、ローターで傷つけてしまう可能性もある。
そのために、現在ドローンには多くのセンサーや制御システムを搭載して障害物を除ける様に開発が進んでいるが、それは本当に正しい方向なのだろうか。
ここに、逆転の発想で、ぶつかっても落ちない、ぶつかっても傷つけないドローンが登場した。
これは案外、近道かもしれない。
除けるのでは無く、ぶつかっても大丈夫というアプローチ
災害現場など、入り組んだ環境を捜索したり、あるいは物資を運んだり、救助活動を行うには、現在のドローンでは余りに脆弱だ。
ドローンは微妙なバランスを保って飛行するため、僅かでも障害物に触れれバランスを崩して墜落してしまう。場合によっては破損してしまうだろう。
しかしこれを操縦者が搭載カメラで現場を確認しながら遠隔操作で除ける事は至難の業だ。
ガラス窓などに気付かず衝突してしまう可能性もある。
そこで、障害物を自律的に回避出来るセンサーとプログラムが開発されている。
しかし、どんなに上手く障害物を躱しても、突風が吹いてどこかに叩き付けられてしまえば、それまでである。
そこでスイスのスタートアップ企業であるFlyability社が提案するのは、ぶつかっても墜落せず、落ちても転がって進み、再び飛び上がれるドローンだ。
そのドローンの名を『GimBall』と呼ぶ。
『GimBall』はまさに災害現場などでの利用を目的に開発されている。
基本的な飛行システムは従来のドローンと変わらないが、その機構は柔軟性のあるカーボンファイバー製のゲージに囲まれているのだ。
外観は、サッカーボールの骨組みにドローンが入ってしまった様な形状だ。
この外側のケージが、障害物から本体を守る。
ゲージがどのような方向から衝撃を受けても、飛行機構本体はケージとは独立した動きを可能にしているジンバル構造で支えられているため、常に水平を保ち、衝撃からも守られている。
また、この構造のために、地上を転がって進む事もできるし、もしも墜落しても、再び飛行することができるのだ。
つまり『GimBall』は、ぶつかってもぶつかってもへこたれないドローンなのである。
しかもタフなだけでなく、優しさもある。柔軟なケージに囲まれているため、万が一人にぶつかっても、ローターや本体の金属部分で人を傷つけることは無い。
災害現場への近道はぶつかってもへこたれないタフさ
Flyability社はさらに『GimBall』の改良を続けており、人が入れないような危険な現場での捜索活動や救助活動に役立つドローンにしようとしている。
例えば赤外線カメラの搭載も検討されている。
確かに複雑な障害物を除ける技術よりも、どこにぶつかっても動き続けることができるようにする、というアプローチは近道に思える。
『GimBall』が災害現場で活躍する日は近いだろう。
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